天宮餓鬼という生命

さて今日は聞き慣れない生命、「天宮餓鬼(てんぐうがき)」についてお話します。

天宮餓鬼。
おそらく初めて聞く方が多いと思います。仏教を知っている方でも知らない人が多いと思います。

天宮餓鬼は、現代で善人と言われる人が行く可能性も高いと思われる世界です。天宮餓鬼は餓鬼の世界の一つです。餓鬼の世界なのですが、天界のような幸福を受けながら、反面、餓鬼道の苦しみを受けるという矛盾した世界です。

天宮餓鬼は、パーリ四部経典には出てきませんが、小部経典の餓鬼事経に出てきます。天宮餓鬼は、神のように神々しく見えます。住んでいるところも天宮のようであり(だから天宮餓鬼といいます)、黄金の建物に住み、綺麗な池があったり、従者を何人も従えていることもあるといいます。

人間が天宮餓鬼を見れば、ほぼ全員が神と間違えるでしょう。それくらい見た目は神々しい存在です。

しかし、反面、夜になると餓鬼となって苦しみ、たとえば魔物に襲われるとか、体を食いちぎられる、極端な孤独に陥って寂しさが募るとかの苦痛を受けるようです。

ちなみに天宮餓鬼の世界に、人間が連れていかれて、その天宮で生活をするケースもあるようです。異郷訪問とその滞在記がいくつかあります。餓鬼事経を読んでいますと、浦島太郎や桃源郷の原型の話しも見られます。天宮餓鬼とコンタクトするケースは、現代でもあるかもしれません。

話しを戻しまして、天宮餓鬼になるのは、布施や善行をしながら、一方で五戒や十善戒を破ることをした人が陥りやすい世界のようです。

こういったのは最近、多いかもしれません。募金を募っておきながら、裏では利益を多く得ていたり、不正な使用をしていたり。また、せっかく善行しながら言動が悪いとか。最近は、偽善であっても「善行」とみなしてしまう風潮もあるようで気になります。

ボランティアや社会貢献は大変素晴らしいのですが、その反面、言動が大変悪いというケースも時々見聞します。惜しいと思います。といいますか貢献もさることながら、心を綺麗にすることも必要で、もっと大切であることだったりします。

布施は尊いです。人助け、社会貢献も大切です。ぜひとも積極的にやっていきたいことですし、より多くやったほうがいいと思います。ですが同時に、心を綺麗にすることももっと行うことですね。

自分自身も反省する点もありますが、最近は方手落ちな印象です。また宗教団体でも教団の維持経営のために、お布施が中心となり、心を綺麗にする指導をしていないどころか、妄想的な教えを信者に教えて、お布施を募らせる指導をしている所もあります。

大変残念ですね。天宮餓鬼へ行く可能性が高いと思う所以です。
ですから、このブログでも開設当初から、心を綺麗にすることの大切さ、偽善行為についても言及してきました。

多くの方は、「良いことをすれば、悪い行為とチャラできる、相殺することができる」と信じています。しかし現実は違います。良いことは良いことして結果を生じます。悪いことは悪いこととして結果を生じさせます。

たとえどんなに素晴らしい善行をしても、人を殺害する、窃盗をする、嘘を言う、不倫をするなどの悪行が続くと、死後、地獄へ行くとか、動物。虫、餓鬼あるいは天宮餓鬼に転生し、輪廻をさまようようです。

かなり怖い話しが続いていますが、仏教で口を酸っぱくして「悪いことをしないように・・・悪いことはしなさんな・・・」と何度も何度も言う理由はここにあります。。。善行も大切ですが、悪行を戒めることを無視していると確実に悪趣へ行ってしまいます。相殺ができないからです。。。

しかしこう言われると、はじめて聞く人は気分が悪くなるでしょう。抑圧的に受け止められることも多くなるでしょう。戒行は工夫して取り組む必要があるのですが、字面だけ額面通りに受け止められて、抑圧的になりがちです。戒を実践するコツは普段からリラックスすることだと思っています。落ち着くことですね。そうすれば自然と戒が守られることが多くなる感じです。

善行と悪行は相殺できません。善行で悪行を打ち消すことはできません。引き算して消すことはできません。ですので、善行と悪行を両方行うと、天宮餓鬼へ行くことのほか、先に悪行が結果を生じたり、善行と悪行が入り交じった人生になったりして、人それぞれのようです。

天宮餓鬼は、天界と同じような恵まれた状態の反面、苦悩がつきまとう餓鬼の世界です。苦しみ、悩み、不安、妄想に捕らわれる側面のある苦しい世界です。

ですので、ぜきるだけ善行を重ね、悪行をしないようにしたいですね。現代ではなかなか難しいのですが、心を強くして実践してまいりたいものです。

そのためにも瞑想ですね。四念処を実践し、自分の心を観察しましょう。そうして良い状態を保てるように精進することです。お釈迦さまはその方法を示し残されています。実践してまいりましょう。