浄居天~色界の隠し部屋?

浄居天

ところで色界には、隠し部屋といってもよい天界があります。それは「浄居天(じょうごてん)」です。

浄居天(じょうごてん)。

今までも何度か出てきましたが、今回、あらためて詳しく書いてみたいと思います。

浄居天という世界、もしかすると初めて聞く方もいるかもしれません。

浄居天は、普通の生命は絶対に入ることができない世界です。お釈迦さまも「浄居天だけは行ったことが無い」とおっしゃっているほどです。

それもそのはず、浄居天に転生しますと二度と生まれ変わってこなくなるからですね。浄居天で寿命をまっとうすると涅槃(阿羅漢)になるからです。ですので浄居天へ行った人は片道切符なんですね。

浄居天は不還果だけが入ることができる天界

浄居天は、ある条件を満たした生命だけが入ることが許される「特別な色界」です。秘密の会員クラブ(下世話な喩えですみません)とは違いますが、ある条件を備えた「人間」だけが入ることのできる世界です。色界の最高位です。

ある条件を満たした生命とは一体・・・?

答えをいいますと、仏道修行をして不還果(ふげんか)となった聖者だけが入ることができる色界です。

不還果(ふげんか)。
アナーガミー、または漢訳して阿那含(あなごん)ともいいます。

つまり浄居天は、煩悩を離れて清浄となった不還果や阿羅漢果が住居できる天界です。

浄居天の構成

ちなみに浄居天は、上下に五層に分かれているといいます。それは、

  1. 無劣天(むれつてん):阿迦尼吒天:あかにたてん・・・劣ったものがなく、あらゆる天人よりも勝れた天人の住む天界
  2. 善見天(ぜんけんてん)・・・肉眼と智慧の目で善く見ることができる天人がいる天界
  3. 善現天(ぜんげんてん)・・・非常に美しく、誰が見ても楽しそうな天人のいる天界
  4. 無熱天(むねつてん)・・・心配などの熱が無い天人がいる天界
  5. 無捨天(ふしゃてん):無煩天・・・自分の天宮を一瞬でも捨てることがでいないほど楽な天界

浄居天の神々の特徴

また浄居天の神々は、
・寿命/16000劫(約69兆1200億年)
・身長/16000由旬(約112000km)
というハイスペックな方でいらっしゃします。

69兆年も生きていますと、どういう感じになるのでしょうか。

浄居天は涅槃に入る神々がいる天界

ところで以前、預流果(よるか)のことをお話しましたが、預流果の聖者の修行がさらに進むと不還果になります。言葉を換えますと、預流果はいずれ不還果になるわけですね。不還果は、阿羅漢(あらかん)というブッダの一歩手前の方になります。

不還果は亡くなりますと、死後、浄居天の神に生まれ変わります。浄居天での一生を終えますと、自動的に涅槃に入るわけです。

つまり浄居天とは、涅槃に入る神々がいらっしゃる世界(天界)をいうわけです。

ちなみに浄土宗のいう極楽とは、この不還果が住む浄居天の神々の世界を言っていられるような印象です。極楽浄土とは浄居天のように思われます。

しかし浄居天は普通の人間には入れません。仏道修行をして不還果となった人間だけが転生できる神々の世界になるわけです。

色界の天界は四層(四禅)の世界といいましても正確には、四禅+浄居天という五層から成り立つ世界といっても良いと思います。浄居天は特殊ですので別格扱いをしたほうがよいと思います。

お釈迦さまが般涅槃するときも浄居天を通っている

ちなみにお釈迦さまが涅槃に入るとき、第四禅で般涅槃しています。これは第四禅からいったん浄居天を通って、そのまま涅槃に至るからだともいわています。実に浄居天は、涅槃の入り口になるのではないかとも思われます。

RPGでいえば、ゴールに到着するための秘密の通路、隠し部屋のような感じですね。

ゴールへの秘密の部屋が分からなければ、プレイヤーはゲームをクリヤーできません。終わりの無いRPGを延々とやることになってしまいます。ゴールへの秘密の部屋へ入れなければ、プレイヤーの経験値はゼロにもなってしまう、まさに永遠に続く「輪廻転生」ゲームです。

隠しモードというか、普通は見つけられない浄居天です。隠しモードになるためには悟るしかないわけですね。