無想有情天~行ってはいけない天界(色界)
色界は梵天の世界で、心は禅定の状態でずっと瞑想し、あるいは四無量心といった慈悲喜捨の深い愛に満ちた状態の神々です。
生命では最高峰といえる状態です。
しかしこの色界に、実は「行ってはならない」とされている色界の世界があります。
「え?行ってはいけない神々の世界?」
と思われるでしょう。
そうです。
実は、色界の梵天界には、行ってはならないとされている世界があります。驚きなのですが、お釈迦さまがそうおっしゃっています。
行ってはならない色界、それは
無想有情天(むそううじょうてん)です。
無想天ともいいます。
無想有情天は第四禅天という、禅定が深まった世界です。
無想有情天は心が一時停止している世界
無想有情天が、何故、行ってはならない梵天の世界かといいますと、実は無想有情天、精神作用が全く止まってしまう世界だからです。一見すると禅定が深まっている梵天の世界と思われますが、さにあらずなのです。
無想有情天は心の働きが一切止まってしまっている状態といいます。
「心が静止しているなら、それは涅槃と同じでは?」と思われるかもしれませんが、違うのですね。
無想有情天は、一時的に心が止まっている状態といいます。無想有情天の寿命が終わると、再び別の生命に転生し心は動き出します。無想有情天に入ると一時的に心がストップするだけのようです。
無想有情天は、第四禅定という深い瞑想の状態で、一時的に心が止まってしまった状態です。無想有情天にとどまっている間は「一回休止」のような状態です。
無想有情天から輪廻転生すると心が動き出す
無想有情天の死後は、別の生命に転生します。心が動き出します。
転生するのは心があるからですね。無想有情天は冬眠しているような状態です。亡くなって転生すれば、冬眠から覚めますので、心が動き出します。これが無想有情天の本質です。
世の中は無常で、常に変化しています。単に一時的に止まっているだけですので、やがて再び動き出すわけです。無想有情天は動物の冬眠に似たような状態なんですね。
あるいは、鉱物のような状態として喩える方もいます。心があっても止まっているなら、それは鉱物と変わりありません。
無想有情天は、寿命は500劫(21,600億万年)です。なんと21億年の間、心が止まったままです。
ですのでお釈迦さまは「ここは行ってもムダ」といったことをおっしゃっています。それはそうでしょう。時間が止まっているような状態です。いたずらに時間を無駄にしますので、21億年間も静止しているのは効率が悪すぎますね。
無想有情天は色界第四禅天の一つ
ところで無想有情天は、浄居天の手前にある世界です。
無想有情天は、色界の第四禅天「広果天」の中にあるといいます。広果天は浄居天のすぐ下にあります。同じ第四禅定でも異質な世界、それが無想有情天なのでしょう。
色界第四禅天は
・浄居天(悟った不還果が転生する天界)
・無想有情天(心が一時停止した状態)
・広果天(第四禅定の状態)
という三層から成り立っているといいます。
涅槃に入る前の最大の落とし穴?
なんていいましょうか、無想有情天は涅槃に入る前の最大の落とし穴といった印象もあります。最後にとんでもない錯覚が待ち受けているようでして、心を一時的に止めたことを「悟った」とするケースもあるようです。
日本の禅僧にも禅定を深めて、一時的に心を止めた状態を「悟り・無明を滅ぼした」としている方もいそうな印象もあります。
こういう禅定を繰り返していると、死後、無想有情天に転生し、約21億年間、冬眠の状態になるそうです。
無想有情天に転生すると、時間だけが流れて、何もしていない「ストップ」したままの状態ですので、行ってはならない世界なのでしょうね。気をつけたい禅定の世界だったりします。