初期大乗仏教の成立と歴史

初期大乗仏教の成立

初期大乗仏教は、紀元前50年頃(仏滅後350年頃)に起き始めたといわれています。

初期大乗仏教が誕生した理由として一般的には、

  • 部派仏教における大衆部の反発
  • 原理主義(上座部)と現実主義(大衆部)との対立
  • 仏教教団内で対立がおきた(戒律をめぐって上座部と大衆部に根本二大分裂)
  • 部派仏教へのアンチテーゼ(反発)
  • 僧院にこもり難解な哲学化に明け暮れる比丘への批判
  • お釈迦さまへの原点回帰運動
  • 在家による仏教運動
  • 仏塔信仰(ストゥーパ)が盛んになった
  • 正式ではない僧侶(ニセ僧侶)がが紛れ込んできた
  • ギリシアの攻撃を受ける(インド北西部)
といった理由が考えられています。大体、この辺りが理由で初期大乗は誕生したと考えられています。

しかしながら複数の要因が絡んで初期大乗という運動が起きてきたのが本当のところだと思います。「ズバリこれ」という理由ではなく、複合していたのでしょう。しかもインドの各地で起きた動きであり、これが初期大乗仏教という潮流になったのでしょう。

初期大乗仏教には二つの流れがある

ところで初期大乗仏教には、大きく分けて二つの流れがあります。このことは大変大事なことですので、しっかりと押さえておく必要があります。これはどういうことかといいますと、

  • 中観派・・・原始仏教(部派仏教)とほとんど同じ
  • 中観派以外の初期大乗・・・仏教もどき
ということです。

龍樹の中観派は原始仏教とほぼ同じ

実のところ、初期大乗仏教に登場した「龍樹の中観派」は、原始仏教(部派仏教)とほとんど同じになります。戒律を守り、四聖諦を実習していたからです。

ところが龍樹の中観派以外は、原始仏教(部派仏教)とは様相を異にします。異質です。仏教の仮面をかぶった仏教もどきというのが本当のところです。

在家仏教は仏教もどき

で、龍樹の中観派以外の初期大乗こそ、

・在家在家による仏教運動
・仏塔信仰の延長による仏教
・正式ではない比丘もどき(ニセ僧侶)の台頭

が絡んだ衆愚運動としての在家仏教です。仏教もどきですね。

初期大乗仏教は玉石混交

で、初期大乗仏教(龍樹の中観派)が勃興した時期に、衆愚運動としての在家仏教・仏教もどきも誕生したということになります。

ですので初期大乗仏教は、

  • 中観派・・・原始仏教(部派仏教)とほとんど同じ
  • 中観派以外の初期大乗・・・仏教もどき
という二つに分ける必要があるんですね。ブッダからの伝統仏教をアレンジした中観派のほかに、衆愚運動としての在家仏教も混在して、まさに玉石混交しています。

初期大乗経典

ところで初期大乗経典は、1世紀前後(仏滅後400年)に誕生したといわれれいます。

中観派系の経典

原始仏教(部派仏教)とほぼ同じ修行をしていたのが龍樹が始祖となる「中観派」です。

中観派は「空の思想」と言われる向きもあります。が、実際の修行は、原始仏教(部派仏教)とほとんど同じだったといわれています。

このことは
・法顕「法顕伝」(5世紀初頭)
・玄奘「大唐西域記」(7世紀)
・義浄「南海寄帰内伝」(7世紀)
の手記にある通りです。

インドの仏教史~変容していく原始仏教

中観派系の諸経典は、空の思想が特徴です。

◆中論
龍樹。相依性縁起。説一切有部を批判。初期大乗の理論的バックボーンとなる。

◆般若経
空の思想。経典読誦の功徳をうたう。文殊菩薩が頻繁に登場する。

◆維摩経
空の思想。文殊菩薩と在家維摩居士の問答。不二法門(ワンネス)がテーマ。煩悩即菩提・生死即涅槃を説く。

◆首楞厳三昧経
深秘の首楞厳三昧を説く。

在家仏教・仏教もどき系の経典

◆法華経
一乗の教え[声聞、縁覚、菩薩ではなく法華一乗]。戦闘的な性格。経典の王を自称。経典の読誦・受持・解説・書写・供養の功徳を力説する。久遠実成の仏を説く。提婆達多を礼賛。日本では馴染みがあって、初期大乗にカウントされているが、特異な仏教であり、実質、仏教とは言い難いスピリチュアル宗教。

◆華厳経
法界縁起。一即一切・一切即一。十地品(菩薩の十段階修行)。自利と利他。毘盧遮那仏。善財童子が悟りを求めて53番目に普賢菩薩(あまねく祝福された菩薩)に出会って悟る(東海道五十三次)。

◆浄土三部経
無量寿経、観無量誦経、阿弥陀経。四仏が登場する。浄土の教えはキリスト教に似ている。

◎無量寿経
弥陀の18願。法蔵菩薩は成仏するために48願を立てたが、十劫前に成仏して阿弥陀仏となっている。つまり法蔵菩薩は成仏しているので誓願は達成されている。すなわち念仏する全ての衆生はすでに救われている(救われる)とする教え。キリスト教の予定説に近い。

まとめ

このように初期大乗仏教は2つに分けることができます。

「大乗仏教」運動はインド仏教史の中でも革命的です。しかし2つの潮流があるということですね。大事なことですので再び書きますが、

  • 中観派・・・原始仏教(部派仏教)とほとんど同じ
  • 中観派以外の初期大乗・・・仏教もどき

中観派系は、実践面においては原始仏教(部派仏教)とほとんど同じだったということですね。比丘は戒律を守り、四聖諦の瞑想修行をしていました。

衆愚運動から派生した在家仏教(仏教もどき)といえども、中心的思想は全て「原始仏教」の中に見いだすことができます。

衆愚運動としても在家仏教(もどき)は、何かと問題が多いのですが、これが中国を経由して日本にもたらされて、日本で大きく華を咲かせます。日本では文化をも形成します。

なんとも皮肉な現象ですが^^;、しかし歴史をきちんと押さえておく必要はあると思いますね。

【関連ページ】
インド仏教史
初期大乗仏教と禅定力
論事1
論事2